YOU−+ 当日の記録

遂に写真解禁!
お待たせした皆様申し訳ありません。


トップバッターは山川冬樹
この日は骨伝導マイクを用い、心音と電球の光をシンクロさせました。

奏でられるホーミーとギターの重低音は、観客の心音ともリンクするかのように会場内に響き渡りました。自分の最も身近にある「心音」そして「声」が視覚化された会場空間は、観客を原初的な感覚へと誘ったのではないでしょうか。


二番目には松本祐一が登場。
この日は自身の代表作《アンケート・アート》を朗読し、ヴァイオリニストがそれに併せて演奏するという豪華な内容でした。

ちなみに《アンケート・アート》とは様々な問題に対する意見をアンケートによって集め、音楽に変換する方法です。回答のテキストを品詞分解し、品詞の種類により音程を決め、単語の長さを音符の長さとして、メロディを作り出すという作曲法です。アンケート回答の文章を分解し、言葉の意味に囚われず文章の構造のみを用いて音楽に抽象化し、テキストとその音楽を提示します。

淡々と語り出される様々なレイヤーに生きる人びとの言葉。普段私たちがTVや新聞で接するような、現代社会をオーバーにあぶり出し、報道しようという姿勢とは異なった「現代」が描かれていました。
また会場内では、アンケートも実施されていましたので、次回作には柏に訪れた人びとの言葉がひとつの曲を生成させるのでしょうね。楽しみです。


三番手のパフォーマーは伊東篤宏。
自作の音具「OPTRON」を用いて、演奏。

ちなみにOPTRONは蛍光灯が点灯時に発生させる微弱なノイズをピックアップで増幅し、アンプリファイし、 空間を光と音で満たすことのできる装置です。OPTRONが産み出すノイズ、そして光は観客の視覚・聴覚を刺激し、享受者はその光と音の「残像」「残響」に身を委ねていました。終演後、人びとはその余韻の中に何を見出したのでしょうか。


そしてラストは企画者でもある橋本匠。

彼は身体を駆使しパネルに象形文字を描き、それが乾き文字が変化していく中でパフォーマンスをおこないます。この日は「マグロ解体ショー」から始まり、複数のパネルに文字を描き、ほぼ即興で演じ上げました。時折観客と言葉を交わし、観客から発せられた言語を拾い上げ、そのシニフィアンから自ら新たなシニフィエを見出し、パフォーマンスをほぼその場で創出していきました。会場中を駆け回り、身体によって紡ぎ出される言葉、そして言葉によって紡ぎ出される身体を披露しました。


私の拙文では伝わらないことも多いかと思いますが、改めて書いていて思ったのはパフォーマンスは一回性、偶然性が高い芸術ジャンルです。しかし橋本の即興パフォーマンスのように「いま、ここで」しか成立し得ない必然性の高いジャンルであるようにも思います。パフォーマンスというジャンルが細分化・多様化していく中で、今後どのような関係性(YOU−+)が生まれていくのか、個人的に可能性を感じさせるイベントとなりました。

twitterなどでYOU−+の感想を見つけると、「お」となって読んでしまうのですが、感想はやはりひとそれぞれで、観客の皆さんが享受したものはさまざまだということを当たり前ながら再確認しました。そして皆さんがその体験を今後の生活の中で、ふと思い出し誰かに伝えること――このような行為によって「YOU−+」という関係が成立していくのではないでしょうか。

(文:コーディネーター清水彩)
(写真:野口健吾)